プロ選手を気取って走ること。これはいち市民サイクリストの権利だ。フランス北部と同じとはいかなくとも、石畳を走れば気分は北の地獄を先頭で駆けるディラン・ファンバーレ。農道脇の激坂を越えるときには、フランドリアンになったつもりで重たいギアを踏み込みがち。
この日は近くにグラベルの道を探しに行く日。ねずみ色の砂利道を期待して入り込んだ川沿いの道は、予想外に白かった。石灰岩の白い道、適度なアップダウンと砂利の粒度。否応なく、ストラーデ・ビアンケの、トスカーナの『白い道』が思い出される。田舎道、通るクルマもほとんどなく、この白い道はいま自分だけのものだ。ライダブルなグラベルに陶酔するうち、すっかりタデイ・ポガチャルのあの力強い走りが気分となる。……実際の走りはどうであれ。
ふと行き当たったのは閉ざされたゲート。これ以上はこの最高のグラベルを走ることができない。しぶしぶと、すごすごと引き返すのだった(とはいえグラベルだと往復で道が違った表情を見せるのでこれはこれで悪くない)。
醒めない夢を走り続けるために。『白い道』探しは、まだまだ続きそうだ。