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レースを観ていることを忘れてしまう Tour de France 2022
by 小玉凌 

開催中のツール・ド・フランス2022を初めて現地で取材している小玉凌さん。初めて訪れたからこそ実感した、ツール・ド・フランスをツール・ド・フランスたらしめているもの。文章と写真で、それをどう表現できるか。ツール現地からの特別寄稿です。
僕は今年、ツール・ド・フランス全21ステージを観に行く機会をもらった。第1ステージの舞台、コペンハーゲンの街と出走した選手、沿道の声援をはっきりと思い出すことができる。そして初めてグランツールを目の当たりにした時に、少し涙ぐんでしまったことも。スポーツと文化が創った「人の凄み」に圧倒されてしまったのだと思う。

ステージを重ねていくにつれて、凄みの源がわかってきた。ツール・ド・フランスは大きく2つの魅力を持つ気がする。レースの舞台になる歴史的な建造物や自然といった「静的」な要素。そして限界に挑むサイクリストと熱狂するギャラリーは「動的」な要素だと思えた。街や自然、変わりなくあり続ける背景にまたと無い動きが合わさり、ツール・ド・フランスのシーンが作られていく。

自転車レース最高峰のコンペティションでありながらある種の芸術でもあると感じた。このレースが持つ美しさは日本でも周知されている。しかしいざ目の当たりにすると、どのスポーツにも当てはまらない偉大さに感情が動いた。

この偉大な21日間の一端を写真として残している。レースコース全てを周ることはできないが、できる限り土地の雰囲気や人の熱を浴びて映像として残したい。どんなにささやかでもいいから自分が初めてこの地を訪れた際の感情を写すことが目的だ。そしてパリでの最終ステージを迎えた時にはどんな感情が残るのか。どんな瞬間を観ることができるのか。残りのステージを存分に楽しみたい。

Text&Photo:RYO KODAMA/小玉凌 @changkodama
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