有力編集者とジャーナリストによる新しいサイクリングメディアが始動間近
元Cyclingtips編集長のWade Wallace氏と、そこで健筆を奮っていた有力ジャーナリストのCaley Fretz氏が新しいサイクリングメディアの立ち上げを表明した。両者はともにCyclingtipsがOutsideに買収されたことの影響により離職を余儀なくされていた。新しいメディアは近日立ち上がるということで、現在はWallace氏のSubstackニュースレターで情報が発信されている。このメディアは読者の会員制により支えられ、優れた審美眼と感性をもつ読者にむけたものになるという。
今回表明された言葉には、新しいサイクリングメディアへの可能性と、現在のメディアの問題点が語られている。本当は全文紹介したいほどの内容だが、いくつか引用するにとどめる。興味ある方はぜひ原文にあたってほしい。
(Youtubeやポッドキャスト、SNSで様々な視点が提供されるこの時代にあって)伝統的なサイクリングメディアは死滅し、まぁ言ってよければクソなものになり果てたのだ。編集基準と方法を正しく実践しているメディアが、である。こうした形式のメディアはマネタイズに苦労していて、今では商品を売るためだけに存在しているかのようだ。この方向性を突き進んでいるのは、メディアの過ちというわけでもない。ただそうなるべくしてなってしまったのだ。目指すべきものがズレていて(KPIはクリック数やPV)、読者にしょうもないタイトルを冠した低レベルなコンテンツを触れさせている。Googleまで脅かすChatGPTのようなAIの登場によって、SEOのために作られたつまらない記事、またそうしたものを掲載し続けるなら既存のメディアも死に絶えるだろう。近い将来には、そうした記事はAIに取って代わられ、価値があるとみなされるのは、人間の手による迫真のコンテンツとコミュニティになるだろう。
訳文が拙いが、物を売ることに専念し、取り立てて卓越性の無いSEO記事を量産する既存メディアへの不信が表明され、サイクリングメディアの未来については高品質な発信とそこに集うコミュニティにあるとWallace氏は述べている。英語圏の大手メディアも近年はかなり商品紹介がうるさく感じているのは私だけではないだろう(そしてそのプロダクトのチョイスはどれも似通っていて面白みにも欠ける)。否定形はどうしても感情に訴えるものだが、次の2つの文は新しいメディアのあるべき形を示している。
・商品を紹介する場ではなく、関係のないプロモーションをする場ではなく、広告を掲載する場ではなく、扇情的な見出しを踊らせる場所でもない。メディアは読者にクソを売りつける場としてあってはならない。
・我々は、みんなにとっての何かにはならない。我々は、誰かにとっての全てになる。
誰もが既存メディアに食傷気味の今、新しいサイクリングメディアはどんな発信をしていくのか。この先のサイクリングメディアのあり方の大きな試金石となりそうだ。
Source: Onwards and upwards! | wadewallace’s Newsletter
AG2R U19チームのオンライン英語学習会
いま、ヨーロッパのプロ市場ではジュニア世代が注目を集めている。U23では遅すぎる、といわんばかりにプロチーム直下のU19のチームが設立され、プロへの入り口としての機能を果たしていることは、ラルートで別府史之さんにインタビューした際にも語られたことだ。AG2RのU19チームでは、オンラインで所属選手たちに英語学習会の取り組みを行っているという。すでにプロのプロトンの公用語は英語。かつての公用語であるフランス語話者も、アジャストしないといけないという事情が透けて見えるが、一方で若手選手の未来まで見据えたこうした取り組みは素晴らしいものでもある。近い将来にはAG2Rのようなフランスチームもより国際化が進み、チーム内の公用語すら英語になることも見越しているのかもしれない。
Source: @AG2RCITROENU19 | Twitter
今シーズン、最もイカすバイク?
2023年になりようやく各チームのジャージやバイクが出揃ってきた(まだ一部選手が確定しない向きもあるが……) 。好みはあるが、YoutuberのBas Tietemaがオーガナイズする新チーム「TDTユニベット」のキャノンデールがとてもイカしている。
De eerste fiets van TDT-Unibet Cycling Team!👇 pic.twitter.com/QX3pZJH9nz
— Tour de Tietema (@tourdetietema) January 4, 2023
個人的にこういうポップなカラーリングが好きなのもあるが、さすがはYoutuberというべきか、ビジュアルイメージの重要性と、そのメイキングまでコンテンツにしてしまうのだからお見事である。チームにはティテマ本人のほか、ワールドツアーチームで活躍したハリー・タンフィールド(英)や、若手シクロクロス選手のトマシュ・コペッキー(チェコ)などいいメンバーが揃っている。将来的にはプロチームへの昇格を目標としているとのこと。
Source: Tour de Tietema